「今まで有り難うございました。」



ニコッと笑う彼女。


その表情はまるで、人魚の様な美しさ。



俺達に背を向け、走り出そうとした女。



「待て……美、海!」



自分も解らない。


何故、知らない女の腕を掴んだのか。


何故、知らない女に知らない名前を言ったのか。



「ふふっ、海斗…愛してます。」



掴まれていた俺の腕をゆっくりと外すと、そのまま部屋を出ていってしまった。


ドサッ



倒れ込む様にソファーに座った。