シンデレラの王子は。


緊張と脈拍がピークに達したとき、
「考えたんだけど、」
勿体ぶらないでスパッと言ってよ。恐いなぁ。
「-----俺は、空未ちゃんと付き合えない。わりぃ」
これはあとで聞いた話なんだけど、架嗄はずっと同じ人のことを好きで、その子とニケツしているところをはるくんは見たことがあるらしい。
1つだけ解ったことがある。
くぅのことを送ってくれた時、なんでチャリがあるのにゆっくり歩いて送ってくれたのか。
架嗄の後はその子の特等席なんだね。
だからあの時、縁結びのって言ったら『念入りに拝んどかなきゃな』って言ったんだ。
くぅなんて、架嗄の視界に入ってなかったのかな。
苦しいよ。さっきまでの苦しさと少し違う苦しさ。
フラれたら直後はそっかってかんじだったけど、今は抑えきれない想いと涙が溢れだして止まらない。
「-----泣いてなんかっ……泣いてなんか…ないんだからっ」
独りぼっちの気がして、もがく様に呟いた。
辛くなんかない。
苦しくなんかない。
痛くなんかない。
哀しくなんかない。
好きなんかじゃ……ない。


あんなこともあった。
告ったことアタシに報告する前に架嗄にフラれてるんだもん。確かその時、初めて空未の大号泣を見たんだよなぁ。