シンデレラの王子は。


「話ぶっ飛び過ぎだから」
笑って手を振りながら帰り道の十字路で羽海とは反対に曲がった。
今年は例年に比べて桜が咲くのが遅かったから、まだ綺麗に咲き誇っている。風が舞い込むと花弁がそれに乗り、くぅの上に降る。
立ち止まり、まじまじと桜を眺めて花の匂いを嗅いだ。
「春の匂いがする~♪…ってとこか?」
すぐ横に見馴れた顔。驚きを隠せずにその人から、少しだけ遠ざかった。
「な、なんでいんの?!!しかもチャリだし、カマハンだし!」
「練習の帰りだけど」
練習帰りにしては、いい匂いしたけど(笑)
まさかの登場にびびっている空未です。
「じゃ、くぅ帰るから、バイバイ」
やたらと早口で帰ろうとしてしまう自分が嫌。
「ま、待てって、送ってくよ」
い、今なんて?
振り返ると架嗄がチャリをひいき、追い掛けてきていた。
「子供じゃないんだから一人で帰れますー」
素直になれない心が苦しいよ
「まだ子供だろーが」
「-----じゃあ、途中まで…」か細い声だったけれど、ようやく言えた本音、敢えて言うなら、チャリの後ろに乗せてくれなかったのがちょっと残念だったかな。でも、ゆっくり一緒に歩けたから嬉しかった。