アタシのこと拐ってくれた人と同じだ。
急にびっくりした顔になってしまっていたと思う。それに気付いているのか気付いていないのか、だよな、とウザがる祐紗兄にツンツンとちょっかいを出していた。
まさか、あの人とは違う人だよね。もっと、大人っぽい雰囲気だった気がするし、やたら話し掛けてくるような人じゃなかった。
でも、何処か似てる気がする。顔は暗かったり涙で滲んでいたこともあって、よく憶えていないけど…
その後も、質問攻めに遇った。帰りは男の人が女の子1人を送って行くルールになっていた(?らしい)
最初は何かあったら困るとか言って、祐紗兄が送ってくれると言っていたのだけれど、桧山さんがそれはないだろと言ったのをきっかけに、祐紗兄の親友さんに送ってもらうことになった。
ネオンが綺麗な街をお互い無言で抜けて行く。
すると、突然立ち止まる君。アタシも少し前で止まり、振り返ってみる。
「あー、このまま帰したくねぇな」
あれ、さっきと若干、雰囲気違う。
「ちょっと、かっこいいこと言ってやろっか?」
次の瞬間、アタシをひょいっとお姫様抱っこして、真剣な顔で言うんだ。
「拐ってやろうか?」
不覚にもトキメキを感じてしまう。