シンデレラの王子は。


遠い筈のこいつが、今隣にいる。
だから、拉致ったのかな俺。
どんなひでー顔してても、目の前でビービー泣かれても、可愛いとしか思えねぇ。
再び顔を覗いてみた。
空が徐々に明るさを増す。
何か寝言を言っている。
「…一ノ瀬さん……ありがと……一緒にいると…楽しいです…」
俺は寝てるこいつに軽くキスをした。こんな隙だらけの時にキスするなんて、俺、男らしくねぇぞ!!!!
でも…
「そんなこと寝言で言われたら、気持ち…押さえらんねぇに決まってんだろ…バーカ」
こっちの身にもなれ。
つーか、なんで『一ノ瀬さん』。なんで敬語。まじウケる。
「んーー!」
よく寝たー♪って……ここ海?!
「あー、起きた」
あれ?瞼が重くて、いつもより視野が狭いぞ。
そうだ昨日、カクカクシカジカだ!!!!!
そして、この背が高くて手の大きな方は?
「また、名前言わなきゃな感じ?」
「あっ、一ノ瀬さ…」
「琉葵。名前で呼んで」
思い出してきた。
「琉葵さんですね」
「さん付けしなくていいし、敬語もいらない。」
「はい、分かりました」
ハハッて笑われた。
「それが敬語だから(笑)」
そいや、祐紗ともこういうやりとりしたなー。って彼は笑いながら言ってた。