シンデレラの王子は。


彼が本当に祐紗兄の親友かどうかなんて解らないけど、もし彼が悪い人でも、拐われてしまおうと、この手に付いていってしまおうと思ったの。
「着いたよ」
闇の中から声と海の小波の音がした。
「下降りる?」
「うん」
アタシ達がいるところは堤防らしい。砂浜はかなり歩きづらいのに、さっさと先に行ってしまうから、アタシも追い付こうと早足しようとしたら何か硬い物に躓いて前のめりになる。
「……!!」
アタシを支えてくれる人が……
「ったく、暗いし、足場わりんだから気を付けろよ。」
いた。
「そのひでー顔の上に砂まみれなったら最悪だろ」
「うん」
悪戯っ子みたいにニカって笑う彼の顔が近すぎて、よく見えすぎて、こっちまで笑っちゃうよ。
「ここに座ろうか。」
彼が座った隣にアタシも座った。
「一ノ瀬さんに振り回されて、疲れました。」
「わりぃ」
「今の褒め言葉です」
「まじで?!褒められた気ぃしねぇわ」
よく笑う人。
彼の隣は居心地がよくて、一緒にいると先生のことを忘れられる気がする。普段は苦手な沈黙も、なんだか気持ちが落ち着く。
不思議な人。
座ったら疲れがどっと出て、うとうと…う……と……