シンデレラの王子は。


でもその声の主は、アタシのこと知ってるみたいで、ブリッ子がやるみたいに袖の中に手を隠して、少し顔を隠すように、顔を上げた。
「恐がんないでよー、俺のことわからんかなぁ?」
涙でぼやけて、はっきりは見えないけど、どこかで見たような、見覚えのある顔のようだった。
「俺、ガキの頃から祐紗の親友やってる琉葵だよ、一ノ瀬琉葵!試合ん時とか、いつも挨拶してたんだけどなー。。。」
「…すいません、覚えてなくて…。」
とにかくこの顔を見られたら、時間も時間だし、祐紗兄にチクられたら終わりだと思って、不自然と思われない程度に隠す。
「そっかー、軽くショック…。つーか、こんな時間に女の子1人じゃ危ないよ。俺が家まで……泣いてんの?」
そう言った瞬間に頭の上に大きな手のひらが乗った。なぜだかビクッとなってしまう。
「わりぃ、恐がらせたか?」
先生がやる頭をポンポンする動作がアタシの中でフラッシュバックする。
「…ねぇ」
顔を隠していた手で裾を掴んだ。
「どうした?」
目の前にいる人は結城先生じゃない。
「なんでもない…です」
彼は背が高いのに、アタシに目線を合わせて話してくれる。
「そっか」