シンデレラの王子は。


兄達は自分の夢に向かって頑張っているというのに、アタシには棚をあさっても何もなくて、羨ましく思った。


塾後は、いつもホテルに向かう。『今日はどこ行く?』って期待して聞くの。
遊園地に行こう。とか、ファミレスでも行こうか。とか、そういう在り来たりの返事を待ってるのに、なんで先生とアタシの距離感はこんなに複雑なの?
嘘でも『好き』って言って欲しいのに。優しいふりしてアタシにだけ意地悪して、アタシにだけ見せてくれる顔も言葉も態度も、全部全部、実はアタシだけのものにできなくて、重いとか思われたくないから気持ちを胸の奥に仕舞っていろんなこと我慢してるけど、もう限界に近くていつか想いが溢れてきそうで怖いの。アタシに先生がしてることは最低かもしれないけど、アタシだって痛いし、会う度にヤるなんて本当は嫌だけど、嫌なんて言ったら、アタシと先生の関係を壊すみたいで、嫌われたくなくて、少しでもアタシのこと気にかけて欲しくて、そんなこと死んでも言えなかった。だからアタシはずっと先生の言うままだった。
「ねぇ、先生?」
強引にベッドに倒し、先生を見下ろして聞いた。
「アタシのことどう想ってる?」アタシの頭のどこかのネジがとれたみたいに自分自身を制御できなくなった。
「可愛いと思ってるに決まってんじゃん」
誤魔化すように茶化しながら笑って余裕に言う。