シンデレラの王子は。


早く返ってくるメールがまるで君が近くにいるみたいで、妙にドキドキと高鳴ってしまうんだ。
『悪いですよ。』
『全然大丈夫っ』
『いや、でも試合前ですし…』
『大丈夫だって!じゃ、バス停で待ってる』
『すいません(>_<)じゃぁ、お願いします』
『了解です♪』
そこからはバスがもっとゆっくり進めばいいのにと思った。一ノ瀬さんと会うのは久し振りだから、恥ずかしいし、緊張するし、内面の自分がパニックになるから大変。
そんなアタシの願いとは裏腹に、すぐに目的地に着いてしまうバス。運転手のおじさんめー!!!!!!とか、思ったりしながら、バスがら一番に降りた。
一ノ瀬さんらしき人は見当たらない。キョロキョロと辺りを見渡していると、キャップを深く被り、オレンジの目立つジャージを羽織った人がこちらに向かって来る。その人が一ノ瀬さんだということはすぐに察した。
「久し振りっ」
「久し振りです」
その時、口から出た日本語はかたことで、多分、一瞬にしてアタシの心境は筒抜け状態となっていただろう。
くすくすと笑って、こっちだよと少し距離をとって、アタシに大きな背中を見せつけるんだ。大きな手も頼りにしたくなる。