「ヒロ、私・・・海へ行きたいです!」

「はぁ・・・っ!?」

何を急に言い出すんだよ!?


「お願い!私、海見た事無いんです!」
「一回でいいから死ぬ前に視ときたいんです!」

「・・・・」


俺は戸惑ったが、ミズの『死ぬ前に』
の言葉が胸に突き刺さった。

「ミズ・・・」
「俺は・・・いいけど・・・」

「本当ですか!?」
「やったぁーっ」


ミズの笑顔は俺の罪悪感なんて吹き飛ばした。
『病気のミズを勝手に連れ出したら駄目に決まってる』
そんな罪悪感だ─・・・。


「明日、明日がいいです!」

「急だなぁー・・・」

なんて言いながらも俺の顔は笑顔。
ミズとこうやって居られるのが嬉しいんだ。


そして俺たちは自分の帰り道を歩く。

「ヒローっ!」

大声で叫ぶミズの声に振り向く。

「明日、絶対ですよぉーっ!!」

「分かってるってっ!気を付けて帰れよぉ」


そのまま俺たちは別れた。

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「ただいまー」

俺は家に着き、玄関で靴を脱ぐ。


「母さん・・・?」

ただいまと言っても返事が無いので心配する。
リビングを見るとそこには転寝してる母さん。


「母さん・・・?風邪引くよー」

「ん・・・あら、大広・・・」
「帰ってたの・・・?」

「今・・・」


疲れてる母さんを起こしたのを
少し後悔する。

ちょっと可哀想だったと。