「大広・・・?」


後ろから名前が呼ばれた気がして
振り向くと、そこには・・・

「か、母さん─・・・っ!?」
「何・・・何で居んのっ?」


吃驚したのかテンパっているのか、
俺は噛み噛みでしゃべり続ける。


「仕事が早く終わったから・・・」
「そんな事より、その子は?」


母さんはミズの方を不思議そうに
見て言う。


「あぁ、友達だよ・・・」

「結城 未寿です」

「大広の母です」


ミズと母さんが名前を言い合う。
何かこっ恥ずかしい気持ちになった。


「大広、お母さんは先に帰るわね」

「うん、分かった・・・」


そう言って母さんの姿は消えていった。

「お母さん、綺麗な人だね」

「そう?結構阿呆だよ?」


ミズは『いいな』と言った様な目で俺を見る。


「何で?そうは見えないけど・・・」

ミズは“阿呆”という言葉に疑問を持ったらしい。


「ん、別に気にする事じゃねぇよ」


俺はそう言って少し微笑んだ。
本当は“別に”なんて事ない。



母さんも父さんも仕事が忙しい。
俺はいつもひとりぼっち。

でも、俺の学費も何もかも親の金で
賄っているから文句なんて言えない。

けど正直、『本当は寂しい』って
心が叫んでる・・・。