それから、一度もミズに会う事は無く夏は過ぎていった。


「大広・・・元気出せよ!いつかまた・・・」

鈴斗はそこで口を止める。
今の俺に何を言っても無駄だというのを悟ったのだろう。

病室も、俺の心も空っぽだ・・・。


あの夢は、そーいう事だったのかな・・・?

『さようなら』・・・。
ミズはちゃんとそのサインをくれていたのに・・・。


「情けねぇな・・・俺・・・」


秋風の少し冷たい風が俺の頬を掠めた。
ミズは“何所”へ行ったんだろう・・・?

嫌な事は想像したくなが、病気というのもあってか、
この世にもう居なかったら・・・
何ていう想像までしてしまう。


ミズの・・・馬鹿・・・。

「何所行ったんだよ・・・?」

「大広・・・」


鈴斗は俺を心配そうに見ていた。
だけど俺は窓から見える景色だけを見ていた。



「陸上部の部長ー居るかぁ?」

そこに急に来たのは陸上部顧問の先生。

「あ、何すか・・・?」

「今日は先生ちょっと用事あってな、部活中止だ」

「え、まぢですか・・・」

「あぁ、悪いな!部長から皆に言っといて?」


それだけ言うと先生は職員室へ戻って行った。