とある街のとある警察署。のある部屋。


刑事課と書かれたプレートが剥がれ落ちるのではないかとその部屋に居た部下は思ったであろう。理由は俺の貧乏揺すりだ。
別にそこらへんで青い顔をしながらパソコンのキーをたたいている部下は別にどうでもいい、今俺を怒らせている対象はこの部屋に居ないのだ。
深い溜め息を吐き出しながらもう何度見たか分からない時計を再度見てみる。

11時にもうすぐなろうかという時間を正確に一秒単位で刻んでいた。


『明日の8時に出勤厳守。』というメールをあの部下は見ていないのだろうか。前の勤め先でもこんな時間まで連絡無しに遅刻していたとしたら、こんな所に飛ばされて来たのも頷けるというものだ。


イライラが溜まって葉巻の吸い殻も灰皿に山の様に溜まってきた。煙が部屋に充満しないのは、空気清浄機が大きな音をたてながら頑張っているからだろう。
現在進行形で遅刻している部下にもこれぐらいの頑張りを見せてもらいたい。でなければ自分もその部下を他の警察署に飛ばしたくなる。近い未来に絶対、イライラと煙草で死んでしまう。

『警部、イライラと煙草で死んじゃうの?』「っ!?」


ビックリしたなんてもんじゃない。心臓が止まるかと思った。息は本当に止まった。
誰でも知らないうちに背後に人が居れば驚くだろう。それが今考えていた人物なら尚更そうだ。


「坂田!?今まで何をしていたっ!?」

『何って、寝てました。』

勢いよく振り返り、今までのイライラを目の前の部下に怒鳴りつけるも、返ってきた答えは反省の意思も無く、部下はひょうひょうと言ってのけた。
今まで寝ていたのだと、隠すことなく、何にそんなに怒っているのか分からないという顔で言ってのけた。


「・・・・、坂田、お前わかってるのか?此処をクビになったら、もう行く所が無い事・・・・」

『覚えてますよ。』