子供の頃から、満月の夜に見る夢は決まっていた。
月が満ちる度に、少女の夢枕には四人の男性が立つ。
ある者は雷を、またある者は炎を、残る二人は光と水を纏って、少女を見下ろしていた。

 そしてまた、新月の夜に見る夢も決まっていた。

今度は見るだけで吸い込まれそうな深い深い闇色の靄が少女の身体にまとわりつく。

そして囁き声が聞こえる。
『私の元へおいで。』と。
その声に少女は導かれるように足を踏み出そうとした瞬間、一陣の風がその靄を祓い、少女を助け出す。

そんな夢。
小さな頃から何も変わらない。
展開も結末もいつも一緒。
あまりにも同じすぎるので、少女は次第に何も思わないようになっていた。