私は支給された細長い銃の銃口を、≪ビンゾ製薬株式会社≫の入口に向けた。

“ボス”からの報告によれば、社長は毎日午後8時過ぎに会社を出るというコトだった。

ちなみに銃は、細長いというコトしかわからない。

私はこう見えて、銃の知識には疎いのだ。

あとはそうだな、スコープがついている。

これを覗きながら打てというコトなのだろう。
おそらく。

私には詳しいコトはわからない。

銃を撃った経験がないからだ。

つまり銃初体験というワケであり、初体験というのはその対象がなんであれ、大抵上手くはいかないものだ。


そのときだった。
≪ビンゾ製薬株式会社≫の社長が一人で会社から出てきたのは。


私は銃を構えた。

照準をターゲットに合わせる。

手と足が激しく震える。

段々息も荒くなってくる。

変な汗も出てくる。

あとお腹も痛くなってくる。

私は考えた。

もしかしたら私は病気なのではないだろうか。

だとしたら今、人を殺している場合ではなく、一刻も早く病院へ行かなければならないのではないだろうか。

そうだ、事態は緊急を要する。

ボスには「ターゲットはガードマンに囲まれていて打てませんでした」そう報告すれば良い。