ゾンビのヒットマン

翌朝、私は“理想の朝”を楽しんだ。

働き始めて以来、1年ぶりに過ごすゆっくりとした朝だった。

ワインに見立てたブドウジュースを傾け、ナイフとフォークに手をつける。

霜降りのステーキを一口頬張ると、幸せが口の中に広がった。

単純だが、生きていた良かったと思った。


私は結局、“ボス”の依頼を断るコトが出来なかった。

もしも“ボス”の依頼が、恋人とは関係のないものだったら。

もしも私が、恋人と結婚していたら。

きっと、依頼を受けるコトはなかっただろう。

なんという運命のイタズラか。

私はこの日から、“ヒットマン”になった。

“ボス”からの依頼は、数日後に≪ビンゾ製薬株式会社≫の社長を殺すコト。

それまでは仕事もない、ゆっくりとした日々を過ごすコトが出来る。


依頼を達成したら、おそらく私は死ぬだろう。

ヒットマンの仕事を続ける私も、新しい仕事を見つける私も、想像出来ない。

だがそれでも今の私は、幸せだ。

そして私に、生きる理由を与えてくれた“ボス”は、私の恩人だ。