ゾンビのヒットマン

その恋人とは、何年付き合っても、キスをせず、手を繋ぐことさえもしなかった。

純愛、と言えば聞こえはいいが、ただ私に勇気がなかっただけなのかもしれない。

彼女は勇気のない、就職すら出来ない私を励まし、支えてくれた。

会うたびに、いつか結婚して、子供は何人作って、と未来の希望を語り合った。


だが、ある日彼女から、メールがきた。





『わたし、結婚することになった』





それきり、会うことはおろか、電話に出ることも、メールに返事をするコトも、彼女はしてくれなくなった。

彼女に何があったのか、今でも私は知らない。

メールボックスの中で保護されたそのメールだけが、私が知る彼女の最後だ。


「結婚をする約束をしたその人も、今はどこにいるのかさえ、知らない」


『それならばきっとわかるだろう、オレの気持ちが』


“ボス”が息をつくのが聞こえた。

呼吸を整えているのだろうと、私は思った。


『オレの恋人を奪ったヤツがいる。取り返すために、人を殺したい』


同じだった。

“ボス”はおそらく、私と同じように恋人を失い、おそらく私と違うのは、恋人を取り戻すチャンスがあるというコトだ。