ゾンビのヒットマン

「誰だか知らないが、私を殺す気か? ちょうどいい。飛び降りようとしていたところだ。殺してくれ」


なにもかもどうでも良かった。

私が死のうと、もう悲しむ人はいない。



今は、もう。



『どうせ死ぬ気なら、仕事をしてくれないか?』


銃口が離れるのを感じた。

だが私は、振り向かなかった。


「悪いが、私はもう仕事を失った。これ以上、新しい仕事をする気はない」


『そうか、働いてくれるか』


「はっきり断ったつもりなのだが」


私は、低い声が震えているのに気付いた。

おそらく、後ろの人物は、泣いている。

そして泣きながら、言った。





『人を、殺して欲しい』





「なんだと……? どういうコトだ?」


“ボス”は、その問いに答えなかった。

その代わり、新たな質問をぶつけてきた。


『君には、恋人はいるか?』


「……いない。だが、かつて結婚を約束した人なら、“いた”」


私がその恋人と付き合い始めたのは、中学の頃だった。

1年生だったか、2年生だったか、正確な日付はもう覚えていない。

それほど、自然に始まった恋愛だった。