ゾンビのヒットマン

『さあ、もじゃブタを殺せ! 今すぐだ!』


「それは出来ない」


女の頼みをはっきりと断ったのはこれが初めてかもしれない。

だが、その頼みだけは聞けない。

聞くワケにはいかない。


「この場面でもじゃブタを殺せば、私は殺人犯になる。それはいい。だが、命令した“ボス”にも責任が生じるはずだ!」


もしかしたら、ここで殺人があったコトも、なかったコトに出来るのかもしれない。

だが、誰かを殺したという罪悪感は、いつまでも心に残り続ける。

私は、“ボス”にそんな思いをさせるコトは出来ない。

私は、“ボス”がいなければこの場に存在するはずのない人間。

恩人である“ボス”に、そんな思いはさせられないのだ!


私は、引き金を引こうとする自分の身体に必死で抵抗しながら、数日前のコトを思い出していた。

私と“ボス”が出会った、あの日のコトだ。