ゾンビのヒットマン

私に“ゾンビパウダー”を使ったのは、“ボス”のはずだ。

この女に選ばれたのは光栄だが、選んだのはこの女でなく、“ボス”。

それは紛れもない事実。


「へなちょこ様。その答えは簡単です。それは“オレ”が……」


グレーマスクがマスクの中に手を入れた。

いよいよ顔出しの瞬間が訪れるのだろうかと思ったのだが、残念ながらマスクは外さず、マスクの中からカチカチと音がしただけだった。


そして次の瞬間、グレーマスクの口から発せられた声は、色気のある低い声だった。




『その答えは、オレが“ボス”だからだ』





な……なんだと!?

バカな!
ボスは男ではなかったというのか!

だが、この声は間違いなく“ボス”の声。

この私が聞き間違えるはずもない。


『言っただろう? 声しか知らない人を信用してはいけない。声など、いくらでも変えられるのだから、と』


マスク型変声機か!

まさかマスクが変声機になっているとは!

蝶ネクタイ型変声機の話を聞いたとき、その可能性に気付くべきだった!