「私も最初は全然出来なかったから、練習すれば出来るようになりますよ。」





「そうだよ!あずちゃんなんて最初来たとき見ていられなかったからね!」




ぐさり。




助け舟を出したつもりが、逆にこっちが痛めつけられてしまった。





「キンさん、それは言わない約束じゃ…。」




うう、無念だわ。




まささんは私たちのやり取りをじっとみて、口を開いた。




「あずみちゃんは身分が高い家から出たの?」




じっと私の目を射る。




突然の質問に言葉を失ってしまう。




「料理が出来なかったなんて、きっといい家柄なんでしょう?」




家柄なんて、まったくありません!




庶民のど真ん中の、根っからの一般人です!と言いたかったけれど、これは駄目駄目。




「わ、私は普通ですよ。」




「それなのに料理が出来なかったの?」




あんまり言い責められると、嘘がばれそうで苦しい。




このご時世料理が出来ないというのとは、そんなに珍しいことなの?




現代にいたとき、確かにお母さんに料理はちゃんと出来るようにしておきなさい、と言われていた。





でも、料理なんて出来なくても特に問題なかったし、周りもみんなそうだった。




最もレトルトや、インスタント食品が溢れる世の中だったから、最悪料理なんかできなくても生きていけたくらいだし。





改めて時代の差を痛感する。




お母さんの言うこと、ちゃんと聞いておけば良かった。




「あはははは・・・」




苦しいけれど、まささんのことは何とか笑って誤魔化した。