「この世は、それに似ているというのですか?」





目を三日月に歪ませる。





納得がいかないのか、甲子太郎の目は鋭く光っていた。




別に、旧幕府のことを言ったわけじゃないけれど、そう捉えてしまったようだ。




甲子太郎も旧幕府軍の人間だから、幕府を悪く言われていい気ではいれない。





平助は平家物語を知らないようだから、良かったけれど。





「新政府軍のことだよ。今は勢いがあるけれど、いつかは息の音も止まるだろうって話。」





そんな未来、俺は知らないけれど。




この場をしのぐためには、嘘を貫くしかない。





「本当?」




「ああ。」





俺の言葉を聞くと、甲子太郎の表情はふっと緩んだ。





それを見て俺もほっと胸を撫で下ろす。




甲子太郎は時折凄い雰囲気を作り出す。




一瞬ですべてを崩壊させるくらいの。






それも、甲子太郎自身の“志”からくるものなんだろう。





決して揺るがない、紅緋色。




―――燃えるような眩しい赤、べにひ。