貝を採るほかにドーターは、よく海に潜って魚も採っていた。



素潜りで、村の誰よりも、深く長く海の中にいられる。

流木を削いで造った槍を持って、魚を追い回し、突き刺して捕らえる。

魚の目が、ドーターと同じく黒く光り、やがて力なく濁って逝くのを見ると、胸は傷んだが、物も言えない貝たちとて、その苦しみは同じ事だと思い、魚を追うことをやめなかった。




その日は、いつもより深く潜りすぎた気がした。
海の色はいちだんと暗く、ドーターの元に光りを届かせない。水も冷たくなってきた。


ドーターには他の人間にはない、空気の層があって、それが薄く彼女の体を包んでいた。

海の中でも、風は彼女について来ていたのだった。

そのおかげで彼女は、かなり長い時を海の中で過ごせるのだ。