海の色

「すごいな、でかいな」

リジリは興奮している。

村にある木出来た手漕ぎの舟とは比べものにならない立派な船がやって来るのだ。

「円波を越えて来るなんて、本当にすごいよ」

「そうね、本当ね」

リジリに応えながら、ドーターはつぶやいた。

―来なければ、いいのに―



ドーターは、王族の船が嫌いだった。
船というよりも、それに乗っている人間たちがだ。

彼らはみな、村人たちと違って、細かい複雑な模様のついた服を何枚にも重ねて着ている。
それも、うるさいくらいの、さまざまな色のついた布で仕立てられた服。

暑くはないのだろうか?


それに、彼らの眼差し。村人たちを見下したような態度。

王族とは、それほどに偉いものだろうか?