海の色

「だけども、人間は、危ないのよ」

真剣に説得しようとするドーターに、笑いを含んだ瞳で、ニーは言い返す。

「あんたも、人間では、ないの?」

その言葉に弾かれたように、ドーターは声をたてる。

「誰もが、私と、一緒じゃ、ないのよ!」

ふうん。
と、ニーはつぶやいて、何かを考えている素振りをする。

確かに、ドーターのような人間は初めてだ。自分を怖れもせず、近づいてくる人間。

こんなに深くにまで潜って来れて、それでいて、長く海の中にいられる。

彼女の足を自分と同じ海草のリボンで編み上げたら、見分けがつかなくなるのではないか。

試しに、今度リボンを巻いて、姉さまたちの所へ連れて行ってみようかしら?