海の色

「あんた、何、慌てているの?」

急に髪を後ろに引かれて、振りかえるとニーが可笑しそうに水中に立っていた。

「あんたは、いつも、慌てているわね」

ちいさな泡をいくつもたてて、ニーは笑っている。

「笑っては、いられないわ。今夜、私たちの村で、魚夜祭があるの。だから、島に、来ては、だめよ。島は、とても、危ないわ」

泡を、途切れ途切れに区切らせながら、ドーターは言葉を続ける。

「島には、王族の船も、やって来るの。見つかれば、捕まるわ。だから、来ては、だめよ。どこか、深くに、潜っていて」

「深くに?…ここは、どこも、あたしの家よ。どこでも、自由に、いられるのよ」