「明日の夜、魚夜祭があるんだ。それを伝えに、長から言われて。松明を二十程用意して欲しいって」

「松明?今から用意しないと、間にあわないわね」

ドーターの不服そうな仕草に、リジリは慌てて付け加える。

「みんな、それぞれ準備があるんだ。俺は祭りでつかう飾網を作らないといけないんだ。突然で悪かったと長も言っていたよ」

汗を流しながら、一生懸命に話すリジリを見ながら、ドーターも承知する。

リジリのことは嫌ってはいない。

「わかったわ。松明は私が作りましょう」

「ありがとう」

松林の丘へ、走り去っていくリジリを見送ると、研ぎ直した槍を小屋に立てかけてドーターは、同じ松林の丘へとのぼって行く。

「今日は、海には潜れそうもないわね。魚夜祭が明日だなんて、ちっとも知らなかったわ」