「ドーター」

松林の丘の方から、駆けおりてくる少年がいる。
風がすぐに少年の方に向かって、少しだけ強く吹き上げてみせる。

「よしなさい、からかうのは」

ドーターは、風をたしなめて少年を向かい入れる。

「こんにちは、リジリ。珍しいわね、何か用かしら?」

リジリと呼ばれた少年は、目に見えない風の存在と、自分より一つ年下のドーターの落ちついた、大人びた言動に緊張しながらも、用件を伝えた。