「待って!」
ドーターは、そう言って、声をかけてニーを引き止めると、大急ぎで砂地に走って行き、地面に落ちている棒を拾って戻って来た。
手にしているのは、一本の松の枝。
ニーは、棒を持って走って来るドーターを見ると、慌てて海の中に帰ろうとした。
初めて出会った日にふざけすぎて、彼女に槍で手の甲を傷つけられた事を思い出したのだ。
「大丈夫よ!傷つけたりはしないから」
大声でドーターが声をかけると、
また、ニーは振り返って近づいて来た。
ドーターの発する声が、彼女にはとても奇妙で不思議なものに聞こえるのだ。
―陸地の生き物は、みんな見えない音を出す―
海中の様々な生き物は、魚から、人魚から、それこそ海藻にいたるまで、音をたてる時には一緒にあぶくを吐く。
その大きさや、形を目で確認して、耳で聴き、意味を考える。喋る方は口を、聞く方は目と耳を使って会話をしている。
ニーの海中での生活は、ずっとそうだった。
こんなふうに、見えない音が存在するのは、彼女にとっては不思議でしかたのない事だった。
ドーターは、そう言って、声をかけてニーを引き止めると、大急ぎで砂地に走って行き、地面に落ちている棒を拾って戻って来た。
手にしているのは、一本の松の枝。
ニーは、棒を持って走って来るドーターを見ると、慌てて海の中に帰ろうとした。
初めて出会った日にふざけすぎて、彼女に槍で手の甲を傷つけられた事を思い出したのだ。
「大丈夫よ!傷つけたりはしないから」
大声でドーターが声をかけると、
また、ニーは振り返って近づいて来た。
ドーターの発する声が、彼女にはとても奇妙で不思議なものに聞こえるのだ。
―陸地の生き物は、みんな見えない音を出す―
海中の様々な生き物は、魚から、人魚から、それこそ海藻にいたるまで、音をたてる時には一緒にあぶくを吐く。
その大きさや、形を目で確認して、耳で聴き、意味を考える。喋る方は口を、聞く方は目と耳を使って会話をしている。
ニーの海中での生活は、ずっとそうだった。
こんなふうに、見えない音が存在するのは、彼女にとっては不思議でしかたのない事だった。



