ニーは、自分の足にコンプレックスを持っていた。
面倒くさい。海草で編み上げたリボンで、いちいちまとめなければ、ろくに泳ぐ事も出来ない。この二本の足が嫌いだった。

なぜ自分だけが、姉たちとは違うのか、わからなかった。

姉たちは、ニーの二本の足の事については何も言わない。ただ、海草のリボンが解けかかっていたりすると、注意してくれて、時には巻きなおしてくれたりもした。

自分はまだ幼いから、足がふたつに別れているのだろうか?姉たちのように、何十年も海の中に浸かっていれば、自然と一本にまとまるのだろうか?

強固な鱗(うろこ)も欲しい。リボンをしっかり巻いていないと、岩や貝などに擦れて皮膚から血が出てしまう…。

そう言えば、
ニーは自分の手の甲を見て、怪我をしているのを思い出した。

さっき、泳ぐ人間を追い回して、付けられた木槍の傷だった。

「ニー。こっちに来なさい」

海婆が、ニーの傷口に気が付いて、海底の深い穴の中から手招きをする。

「はぁい」

ニーは返事をすると、海婆の穴の中に入って行った。