本来なら二月以上かかる東西の砂漠越えを、彼らはその半分ほどの行程で成し遂げる予定だった。
 最低限の休息のみで、後半は朝も昼も夜も砂漠に点在するオアシスを中継点に、最短距離をただひたすら駆け抜ける。
 彼らの尋常ではない砂漠越えは、予想をはるかに越えてクナの疲労をもたらした。
 それでも、彼らは休むことはなかった。
 クナが力尽きる前に、オアシスごとにクナを替えていった。
 莫大な金が消えていったが、それすらも構わず、ひたすら西を目指した。
 彼らの行程を支えていたのはオアシスを拠点として商いを営む砂漠の民のおかげだった。
 砂漠が大陸を二分しているため、どうしても交流は海路か陸路しかない。
 その陸路も、砂漠をゆくのと迂回するのでは雲泥の差となる。
 砂漠の民は土地の利を利用して部族毎に拠点となるオアシスで生活を営む傍らで、砂漠を渡る行商隊を相手に次のオアシスへの道案内や物資の補給によって収入を得ている。
 そして、砂漠の民は、今回の彼らの旅にも事前に連絡されていたため、全てのオアシスに補給用の物資と替えのクナが用意していた。
 だからこそ、彼らはこの西への旅を驚くべき速さで成し遂げつつあるのだ。
 一月が過ぎた頃、すでに彼らは砂漠の中心をとうに越えていた。
 あと半月もかからずに完全に砂の海を抜けるだろう。
 すでに砂砂漠は様相を変えつつあり、見慣れた乾いた赤土がところどころに点在する。
 景色が変わりつつあることと宿屋に着いたことで、男衆達は皆一様に浮かれていた。