次の日は、剣の稽古をするために、街の北門を抜けてから、レギオンの管理している果樹園へと向かった。
 宿屋には剣の稽古ができるほど広い場所もなく、また、目立ってはならないため、人目を避けなければならなかった。
 その点で言うと、レギオンの果樹園ならうってつけだ。
 あそこも周囲を囲ってあるし、出入り口には常に管理人と見張りがいる。
 中を見回る者もいるが、決められた時間にしか来ないので、この広さでは支障はない。
 管理人は事前に聞いていたので、快く二人を中に入れてくれた。
 中に入ると、それまでの乾燥した黄土色の大地など嘘のような光景が広がっていた。
 治水管理が完璧に行われた果樹園には、碁盤の目のように水路が張り巡られ、街中の乾いた石畳や小路の剥き出しの黄土とは打って変わって、通路は丈の短い下草に覆われていた。
 見事に計算されつくした木々の並びは、美しいとさえ言えた。
 たわわに実った果実が生い茂る濃い緑に鮮やかな彩を与えている。
 まさに、緑の楽園のよう。
「素晴らしい眺めだな」
「人手があまり多くないから、少ない人数でも管理できるよう徹底したそうだよ。レギオンの元締めは、この街の出だから、思い入れがあるんだろ。
 果実の収穫は朝早くと決まっているから、昼過ぎは、出入り口の小屋にある管理人と見回り以外は滅多にここへは人は来ないんだ」
 アウレシアは囲い沿いに右へと進むと、角にあたる所まで来た。
 そこは、剣の稽古をするにはちょうどいい広さだった。