予定通り、昼前には、一行はシバスという周囲を高い日干し煉瓦で囲まれた街へと入った。
 街道沿いの北の街では一番大きいこのシバスは、レギオンの営む宿屋がある。
 そこでなら、一行も旅の疲れを癒せる。
 旅の途中で、あれ以来毒が仕込まれることもなく、やはり小麦の袋は旅の一行以外の者が仕込んだものを買ってしまったと結論付けられた。
 誰が、なぜそうしたのかは、未だにわかってはいないが、旅の途中で後をつけられているわけでもなく、刺客がくるわけでもなかったので、とりあえずここを出るまでは刺客を気にしなくてもいいだろう。
 そこで馬を厩へ入れ、早めの昼食をとると、アウレシアはリュケイネイアスに許可をもらい、イルグレンを街中へを連れ出した。
 あっさりと許可がでたのは、この街ならば不審な者達がいればすぐにわかるからだ。
 この街に立ち入る者には、予めレギオンの許可が必要となる。
 事件が起こればすぐに街は封鎖され、蟻の子一匹出られない。
 街の護衛もレギオンが兼ねているので、まさにここはレギオンの街といってもよかった。
 そして、レギオンは依頼主との契約は何があっても守り抜く。
 ここではイルグレンはどこよりも安全だった。
 街の通りのいたるところには露天が立ち並び、行き交う旅人達が見物したり、興味深げに買値を交渉している。
 興味深げに通りを眺めるイルグレンを連れて、アウレシアは街の中心にある広場へと向かった。
 たくさんの人間が集まるこの広場の中央には、闘技場が設けられている。
 今日の昼過ぎに、ここで戦士達の腕比べがあることを、アウレシアは宿屋で確認済みだった。
 広場の中央には大きな円形の舞台があり、それを囲んで見物人達が座り込んで飲み食いをしながら談笑している。
 さらにその周囲には食べ物や飲み物の露天が並び、まるで祭りのように賑わいでいる。
「ちょうどいいや。これに出るんだ」
 広場に入って、アウレシアは男達が並ぶ受付を見つけて、イルグレンとともに並んだ。