昔、町で時折見かけた砂漠の民は、長い布を頭からかぶることでこの日差しを遮っていたのだろう。
 目元以外全く肌の見えないその格好は暑いのではないかとずっと思っていたが、実際は炎天下でも、毛布を日除け代わりにして影を作れば、意外と涼しくもなるということを初めて知った。
 だから、うだるような熱気にも水分の補給さえこまめにしていれば、まだ耐えられた。
 砂砂漠に入る手前のオアシスで、馬からクナに乗り換えていたことも幸いした。
 クナの背中は馬よりも脂肪が厚く、やわらかいため、長時間乗っていてもさほど負担にはならなかったのだ。
 それだけでも、女には十分ありがたかった。
 しかし、砂漠の夜は、正直、馬に乗りなれないことよりも、日中の暑さよりも、女には辛かった。

 寒すぎるのだ。