女は与えられた毛布で体を包み、必死に眠ろうとしていた。
 日の落ちた砂漠の寒さに震えながら。
 もともと東で生まれた女は、常春のような、気候しか知らない。
 過酷な熱も、極寒も縁のない世界だ。
 それまで一度も乗ったことのない馬に乗り続けた二週間は、腿の内側と裏側は内出血で紫に変色した。
 加えて、揺れに酔い、吐かないために、日中は移動のほとんどを水のみで過ごした。
 食欲など、ほとんどなかった。
 水だけのほうが、むしろありがたいほどだった。
 すでに、砂漠は、女が聞いた一面の砂に、様相を変えていた。
 見渡す限りの砂丘。
 どこにも、植物の姿はなかった。
 それにより、旅はいっそう過酷なものにも変わった。
 初めての砂砂漠の熱気は女の食欲さえも奪ってしまった。
 日中の過酷な暑さは、流れる汗さえ感じる前に瞬時に蒸発させてしまう。
 暑くても汗もかけないような状況にいても、女以外の男達はみななんでもないことのように動いている。
 よっぽど旅慣れているのか、馬からクナに乗り変え、食事の準備や後始末、夜に備えての火起こしや、天幕の準備など、分担してこなしていく。
 全てが初めての女はそれどころでなく、なけなしの体力すら失わぬよう毛布を頭からかぶって横になっているしかなかった。