夕暮れが近づいていた。
 一行はすでに各々で野営の準備を進めていた。
 先に向かった馬車の中には皇子の身代わりの護衛がいるのみで、いつも帰りを迎えるはずの侍女のウルファンナはいなかった。
 今日に限ってと不思議に思ったが、とりあえず護衛に頼んでウルファンナに伝言を残し、アウレシアとイルグレンは野営場所へと向かった。
 見張りを兼ねたしんがりを務める彼らは、馬車の後ろの、風の当たらぬ低木の影に天幕を張り、その近くでアルライカとソイエライアは食事の準備をしていた。
「ソイエ、ライカ。飯出来てる?」
「ちょうどいいところに来た。あとは、この香味野菜をいれて終わりだ。手伝え、レシア」
「あいよ。グレン、そこに座ってな。もうすぐ出来るから」
 火の傍から少し離れたところに敷いた敷物をアウレシアは指したが、イルグレンは、
「いや、私も見ていたい。料理を作るところを見るのは初めてなのだ」
 と、興味津々に玉杓子で鍋の中身を焦がさぬようかき回しているアルライカやパン生地を練っているソイエライアを見ていた。