「一緒にいすぎたね。だから、勘違いしたんだよ。公都も近い。本来のあんたに相応しい場所に戻れば、こんなことは気の迷いだったとすぐ気づくさ」
 子どもを諭すようなアウレシアに耐えられず、イルグレンは彼女を引き寄せ抱きしめる。
「気の迷いではない。私は、お前を愛している――愛している。離れたくないのだ。頼む。私と来てくれ。傍にいてくれ。私はもう、お前を知らなかった頃には戻れない――!!」
 だが、どんなにきつく抱きしめても、その腕が自分を抱きしめ返してくれることはなかった。

「――あんたが好きだよ、グレン。
 でも、あたしはあんたのために全てを捨てることはできない。
 そうするほどは、愛してない」

 真実だった。

 彼女は、いつも本当のことしか言わない。
 だが、それが今は苦痛となってこの胸を刺すのだ。