先に仕掛けてきたのは、男のほうだった。

 速い――!!

 アウレシアは身構えていたのに、咄嗟に構え直した。
 男の大剣を、細身の長剣で受け止める。
「!!」

 この男は、自分より強い。

 打ち合った瞬間に気づいてしまった。
 圧倒的な力ではじき返される前に、アウレシアは跳びすさった。
「女にしては、いい腕だ。勘もいい」
 男は大剣をいともたやすく振り払った。
 打ち合った衝撃で、アウレシアの剣を持つ手は痺れている。
 アルライカでも、ソイエライアでも駄目かもしれない。
 確実に勝つなら、リュケイネイアスでないと。
 いるのだ、そんな男も。
「――」
 だが、イルグレンをおいて逃げるわけにはいかない。
 依頼主を見捨てて逃げるなど、渡り戦士にあってはならぬことだ。
 激しい剣戟の最中、ともすれば逃げ出したい衝動にかられながら、それでもアウレシアは自分を奮い立たせようとしていた。