「誰に雇われた?」
「……」
「言葉に西の名残がある。サマルウェアだろ。皇子を受け入れるはずの国からなぜ刺客が来る」
「わかっているのに、まだ問うか……」
 刺客はすでに虫の息だが、にやりと笑った。
「……公国も、一枚岩ではないということ、だ……賛成派と……反対派がいる。皇子様に来てもらっては困るお偉方も……いるということだ」
 そこまで言うと、刺客は咳き込んだ。
 口元に、血が見えた。
 斬られて傷ついた内臓から血が上がってきたのだろう。

「だが、もう遅い……皇子は、死ぬ」

「? どういうことだ」
 アルライカが再び問う。
「俺達は、別働隊だ……」
「!?」
 それを聞いた三人の表情が険しいものになる。
「お前達渡り戦士が離れたのを確認して、本隊の五十人が襲撃している……今頃は、一人残らず、死んでいるだろう……」
 にやりと笑って、男は目を閉じた。
 それを聞いて、三人は顔を見合わせた。
「――五十人」
 さすがのアルライカも渋い顔をした。
 リュケイネイアスとソイエライアの二人がいるなら、大丈夫だろう。
 ソルファレスも、鍛えた護衛達もいる。
 だが、刺客の数が多すぎる。
 誰か、死人は出るかもしれないと密かにアルライカは思った。
 そんな思いを感じ取ったのか、イルグレンはアルライカの肩を掴んだ。
「ソイエが、皆が危ない。ライカ、戻ろう」
 呆れたように、アルライカは立ち上がり、目の前の皇子を見下ろした。
 青ざめた顔は、今にも自分が死にそうだ。
 安心させるように、アルライカはイルグレンの肩に手を置く。
「ソイエは死にゃしねえよ。強いからな。ケイもいる。護衛隊長もいるし、心配はいらないだろ。俺らの仕事はお前を守ることなんだから、ここにいるんだ」
「刺客の狙いが私なら、主力は向こうだ。お前達が強いのはわかるが、大勢に敵うのか? エギルやファンナは闘えない。護衛の者達はお前達ほど強くはないだろう?」