刺客の襲撃から十日以上が経った。
 その間、一行は何事もなく旅を続けていた。
 護衛の鍛錬も順調で、アルギルスをはじめとする五人の身代わりの護衛達は、短期間であっという間に腕前が上達した。
 特に、アルギルスは護衛隊一の腕前にさらに磨きをかけ、アルライカとは一番長く手合わせをできるようになっていた。
「ずるいな」
 最後までアルライカと剣を交えているアルギルスを見て、イルグレンが呟く。
「何が?」
 アウレシアが横で尋ねる。
「ギルスだ。一週間と少ししか稽古していないのに、もうあんなに強くなっている」
「ああ――それは仕方ないさ。年期が違う」
 肩を竦めるアウレシアに、イルグレンはさらに言い募る。
「じゃあ、私もギルスぐらい稽古したら、いつかライカに勝てるのか?」
「保証はできないけど、いいとこまではいくんじゃないかい? ギルスが十四から護衛隊に入るほどの腕前の持ち主なら、相当な鍛錬をしてきたはずさ。しかも、五年連続皇都の剣術大会で優勝するほどなら、すぐに上達するのも当たり前だろ。そんなの大人と子供を比べるようなもんさ」
 納得がいかないようにイルグレンは唸った。
「つまらん。つまらんぞ。私ももっとライカやソイエと戦いたいのに、護衛が優先とは」
 呆れたようにアウレシアは笑った。
「あんたが言い出したことじゃないか。全く」
「そうでも言わんと、エギルに馬車に軟禁されてしまうと思ったからだ。護衛が強くなるのはいいが、私の稽古時間が減るのは割に合わん」