互いの熱が引いて、乱れた息が落ち着いても、イルグレンはアウレシアの肩を抱いて、寄り添ったままで横になっていた。
 薄闇に見える天幕の天井を見上げて、
「夜明けが近いな――」
 そう呟く。
 アウレシアは顔を少し上げて、イルグレンを見た。
「まだ夜明けを淋しいと思うかい?」
「――いいや」
 密やかに、イルグレンは微笑んだ。
 見返す眼差しは愛おしさに満ちていた。

「あの時のようにお前がいるから淋しくない。
 お前がいてくれるなら、どこにいても、きっと私は淋しくない――」

 今、二人でいるこの時は、全てを忘れていられる。
 自分のこれまでの人生も、これからの未来も、死の危険も、己の価値も。
 夜が明けるまで寄り添ったまま、この時がずっと続けばいいと願った。