「私の人生とは、何なのか考えてしまう。死んだ母に誓って、最後まで、決して命を、生きることをあきらめたりはしない。だが、そうするだけの値打ちが、価値が、私の人生にはないように感じる」

「グレン――」
「それでも、お前達と出会えたことは、私の人生の中で、最も価値のあることだ。例え旅の半ばで死んでも、そのことは悔いたりしない」
「そんな、今から死にに行くみたいな言い方――ホントになったら困るから言わないどくれ」
 そんなアウレシアの頬を引き寄せ、イルグレンは愛しそうにくちづけた。
「以前の稽古のように二人きりになれないのは辛いな」
「――今、二人きりじゃないか」
 笑うアウレシアに、イルグレンは困ったように笑い返す。
「人が近すぎる。くちづけ以上のことはできないだろう」
 そしてもう一度、今度は丁寧に、長く、感触を確かめ合う。
 互いの吐息が乱れるまで。
「ライカなら、気づかない振りをしてくれるよ」
「本当に?」
「ああ。それとも、我慢するかい? それなら、帰るけど」
「――駄目だ」
 身を引きかけるアウレシアを再度引き寄せる。
「我慢など――できるわけがない」
 くちづけながら、毛布の上に倒れこむ。
 そうして、できるだけ音を漏らさぬよう、密やかに求め合った。