「それでは、私とギルスはエギル様に報告がてら、周囲を見回ってくる。お前達は火の番を頼む」
「畏まりました。レオン殿とギルス殿におかれましては、くれぐれもお気をつけください」
「うむ。お前達も油断するな。さあ、行こうではないか、ギルス」
 吹き出したいのをこらえるように表情をひきしめながら、
「承知いたしました。レオン殿」
 アルギルスがイルレオンに向かって敬礼する。
 イルグレンも面白そうに付き合う。
「レオン殿、エギル様に皇子様は今日も一日健やかに過ごしたとお伝えしていただいてもよろしいかな」
「お任せあれ。グレン殿のお言葉、しかと伝えましょうぞ」
 芝居がかったお辞儀をして、二人がにやにやと笑う。
 周りの男達も生真面目に敬礼を返すが、表情は笑いをこらえているのがありありとわかる。
 それでも、誰一人実際には吹き出したり笑ったりしない。
 できないのだ。
 声を出して笑った者には罰として休憩なしのアルライカとの稽古が課せられているからだ。
 それは、野営場所への帰り際に、アラムが思いついたことだった。

 皇子の口調を真似て、ごっこ遊びを楽しむ。

 なかなかに良い作戦だった。
 真面目に対応すると疲れるものだが、遊びと割り切れば、面白くもなる。
 五人の中で一番順応が早いイルレオンが、率先してやりだすと、残りの四人も付き合ってやりだした。
 一度やって慣れてしまえば、あとは笑いをとるようにわざと大げさに演技する。
 おかげで、ますます誰が皇子だかわからなくなり、そうして笑いを堪え合っていると、育ちのいい貴族の子弟が戯れあっているようにも見えるから不思議だった。