「血は争えぬ――」

 低い、小さな呟きが漏れた。
「エギル様?」
「陛下と同じことを言われた。そこにいるのが、若き陛下であるように思えた。私も老いたものだな――」
 自虐的に笑うエギルディウスに、ソルファレスとリュケイネイアスはかける言葉を探せずにいた。

「歴史は後に、陛下を国を滅ぼした愚かな君主と語るであろう。
 だが、私は知っている。
 そなた達も知っている。
 陛下は聡明な方であった。
 誰よりも聡明な方だった。
 だからこそ、悲しいほどに、先を見ていたのだ。
 国を滅ぼすという君主に有るまじき過ちを犯したかも知れぬ。
 死を以て償っても到底足りぬほどの大罪を犯したかも知れぬ。
 それでも、その全てを承知であの方は己の義務を全うしたのだ――」