ソイエライアが咄嗟に顎を押さえたが遅かった。
 刺客の身体が前のめりに傾ぐ。
「くそっ、毒を飲んだ――」
 刺客の男の唇から、血が滲み出していた。
 ソイエライアはこと切れた男の身体を乱暴に押しのけ、訝しげに呟く。
「こいつら、皇子の顔を知らないのか?」
「そうらしいね。目の前にいたのに、気づきもしなかったよ」
「確かめてから襲ってくるぐらいの分別もないのか。最近の刺客は殺り方が杜撰だな」
「無理ないさ。皇子様が堂々と出歩いているとは、誰も思わないだろ」
 そうして、二人はその皇子に視線を移した。
 イルグレンは剣を持ったまま背を向けて立ちつくしていた。
 その様子がおかしいことに、二人は気づいた。