イルグレンの戦いぶりに安堵しつつ、アウレシアは確実に刺客を足止め、倒す。
 取り囲む敵が、一斉にイルグレンに向かわないために、長剣とともに短剣も使い、一度に二人の相手をする。
 斬り合って気づいた。
 刺客の型は、東のものとは違う。
 西の――?
 どういうことだろう。
 追手は東からではなく西から来たということは。
 まさか、サマルウェアからの刺客なのか。
「くそっ、強い」
「女を先に捕まえろ」
 アウレシアはさらに驚いた。
 自分を捕まえて、どうするつもりなのだ。

 狙っているはずの皇子が、目の前にいるのに?

 アウレシアは向かってくる刺客を斬り捨てながら、確信した。
 イルグレンを狙っているのではない。
 それどころか皇子だと気づいてもいないのだ。
「好都合ってもんだ」
 低く呟いて、アウレシアは思い切り剣を揮った。