「お前が何をしても、リュマは戻ってこない」

 低い男の呟きに、子守歌が止まった。
 女がそっと振り返る。
 わかっているのだ、女にも、本当は。
 それでも、こうすることでしか生きていられない。

「弟を見殺しにしたあたしは、すでに堕ちている。
 これ以上堕ちたって、どんな違いがあるっていうの?」

 目を決して逸らさず、じっと男を見据える。
 最後に言葉を無くすのは、いつも男のほうなのだ。
 たくさんの気休めの言葉なら、いくらでも言うことができたが、それこそ意味がなかった。