あの日からずっと、男は悔いている。
 もし、もう少しはやく戻っていたなら、リュマを救えたはずなのだ。
 女は自分を責めていたが、自分とて同罪だ。
 救える力があったのに、間に合わなかった。
 あの国の情勢が混迷しているのを知っていながら、リュマと結び付けられなかった自分の腑甲斐なさが、救える生命を死に追いやったのだ。

 リュマに会いたかった。

 自分の話を瞳を輝かせて聞いてくれた、自分の身を案じてくれた、育ててくれた優しい姉を何より愛していたあの少年が、あんなにも痛ましい死を迎えたことを忘れ去りたかった。