「ライカ、ソイエ、あれ、幻かい…?」

「あんなにくっきりはっきりして、幻も何もないだろうが、レシア」
 呆然と問うアウレシアに、冷静に答えるソイエライア。
「まあ、幻と思いたい気持ちは、わからんでもないよな…ソイエ、俺達、ホントにこの依頼受けんのかよ」
 アルライカもアウレシアほどではないが呆れたようにソイエライアに確かめる。
 確かめずにはいられないのだ。
 何かの間違いに違いないと思いたかった。
 それほどに、衝撃を受けていた。
 皇族であることを隠しもしないその出立ちで自分達の前に無防備に姿を現した皇子様に、アウレシアは半ば呆れ、半ば感心してしまった。
世間ずれしているというか浮世離れしているというか――まあ、貴族、しかも皇族であれば無理もないのであろう。

 そう――住む世界の違う人間なら。

 しかも神々の末裔とまで豪語するような、創世神話まで血統を辿れるほど尊い古い血が流れているのだ。
 アウレシアは皇祖天神説など信じてはいないが、この目の前の皇子に限っては、もしかしたらと一瞬思ってしまった。
 この、人間離れした皇子様ならと――

 皇族最後の生き残りの皇子を、自分は今目にしているのだ。