この二年近く、女の生活はまさに針の莚だった。
 仕えた姫は傲慢で、彼女をこの敷地内から昼は一歩も外へ出さず、男の目に触れぬよう下働きとしてこき使った。
 彼女の仕事は、最初のうちの数ヶ月を除いて、常に地下の作業小屋か、みんなが寝静まった後の今日のような嫌がらせのくだらない言いつけばかりだった。
 仲間と呼べる同じ下働きの侍女も、片手で数えるほどしかできなかった。
 たった一人の作業で、女を孤立させる意図はみえみえだった。
 明らかに、女に対する嫉妬だった。
 お世辞にもその姫は美しいといえる容貌ではなかったからだ。
 理不尽に鞭打たれることだけはなかったが、心は、そうされているのと同じだった。
 たまの休みに、家に帰しても貰えなかった。
 他の下働きの女達が交代で帰してもらえるのに、女だけは何かと理由をこじつけられ、帰れなくされた。
 自分がおいてきた弟が心配で、唯一歳の近いカリナという侍女に、手紙と生活費用の金をことづてるしかなかった。